SHIGOTOBA101 PROJECT
シゴトバ101プロジェクト
それぞれの時間が流れる、小さなコワーキングスペースを目指して。
担当
東伊豆設計室
バトンを受け継ぐ「やどかリレー」
まちの方々から物件・事業の募集を行う「公募」。これまでこれまで先輩方が11年間の活動で育んできたまちの方々との繋がりや施工を通じて生まれた責任と信頼。そんなバトンを受け継ぎ、まちの活性化の輪をさらに広げていくことを目指した。
AKPと地域との関わりが、より身近で継続的なものとなるように。そんな思いから「やどかリレー」の愛称が新たに生まれた。このプロジェクトは、その「やどかリレー」から始まった、学生が初めて関わる片瀬地区での取り組みである。
「101号室」から「シゴトバ101」として
アパートの一室を、地域に開かれたコワーキングスペースへと改修。
お施主様からは、都心と伊豆など二拠点生活のひとつの拠点としての利用を見据え、アパート全体の付加価値となるような設計を期待された。
学生間では、この場所や地域にどのような空間がいい影響をもたらせるか、議論を重ねながら計画を進めている。
検討を重ねて
検討を重ねた結果、当該物件の設計を進めるにあたり、全体を四つの班に分け、班ごとに異なる視点から案を作成し、それらをコンペ形式で町の人々に提示して最終案を選定してもらう方式を採用した。この方法は、設計者だけで結論を出すのではなく、実際に利用する地域住民の意見を反映させることを目的としている。
各班はそれぞれ独自のアプローチを取り、まず明確なコンセプトを設定してから内部空間の構成を段階的に検討していく班もあれば、先に内部空間の具体的な価値や使われ方を掘り下げ、その魅力を最大限に引き出す外部条件や構成を後から整えていく班もあった。また、中には一見すると敷地や用途とは直接関係のない出来事や地域の記憶、文化的背景などを手がかりとして設計に落とし込み、新たな意味づけを試みる班も見られた。
このように、同じ条件下であっても思考の出発点や重視する要素が異なることで提案内容は大きく変化し、各班の個性や問題意識が色濃く表れた。最終的には、それぞれの案が持つ特徴や魅力を町の人々が比較しながら評価することで、多角的な視点に基づいた選択が可能となり、地域にとってより納得感のある計画へとつながることが期待された。
空間に選択肢をもたらす最小限の操作
利用者が思い思いの場所で居心地を感じられるように、素材を活かした最小限の設計とした。
お施主様とともに手を動かし解体や施工を行う中で見えてきた、土地や物件ならではの魅力を大切にしながら、丁寧に設計と施工を重ねている。
既存の物件を生かす
街の人々が心地よく快適に過ごすにはどうすれば良いかを試行錯誤した。そこで考えられたのが、RC躯体の存在感をより引き出すような空間づくりが大切ではないかと考えた。
仕上げ材は木材にし、色彩は暗いオークの色で統一して仕上げ材に塗っていく。また、照明は暖色系にし、空間全体に行き渡らせるように配置した。できた空間は統一感のある暖かい空間だ。
仕上げ材や照明など、細部にこだわることによりRCという既存の躯体の価値を引き出すと共に、街の人の記憶を継承する良い手法であることを実感した。
テラゾーワークショップ
シゴトバ101が思い出のある場所になるには、街の人と積極的に関わり、共に作ることでもあると思う。そこで開催したのが、テラゾーワークショップである。
テラゾータイルは全26枚で構成されており、そのうち10枚は、11月に開催したテラゾータイルのワークショップにおいて、地域住民や子どもたちと共に制作したものである。
硬化後に表面を丁寧に研磨することで、内部に埋め込まれた多様な色や形の石の断面が現れ、テラゾー特有の豊かな表情が浮かび上がる。今回はタイルの厚みが非常に薄く、施工には大きな困難を伴ったが、試行錯誤を重ねることで、精度と美しさを兼ね備えた仕上がりを実現した。
制作過程で一部に破損が生じたものについては金継ぎを施し、傷を隠すのではなく、新たな価値として取り込んでいる。さらに、石の配置の中には「AKP」の文字が密かに組み込まれており、作品を鑑賞しながら発見する楽しみも備えている。
竣工後に街の人々が訪れた時に、思い出として残るような部分が、ワークショップによって作られたと感じる。
地域に寄り添うコワーキングスペースを目指して
シゴトバ101の設計、施工で特に重要だったのが、天井の取り付けと、足湯の設置だった。天井は内部空間の印象を大きく左右すると同時に、人々が安全かつ安心して過ごせる環境を支える重要な要素である。そのため天井班では、仕上げだけでなく構造の基盤となる天井を支える格子から検討を始め、製作と施工を段階的に進めてきた。
9月の施工では格子の製作と取り付けを行い、脚立に上りながら安全面に十分配慮して作業を実施した。暑さの厳しい中、長時間上を向いての作業は想像以上に過酷であったが、互いに声を掛け合い協力することで無事に設置を完了した。続く11月の施工では、完成した格子を下地として天井板の取り付けを行った。
季節は移り変わり寒さが増していたが、自分たちの手で作り上げた構造を頼りに、着実に仕上げ作業を進めることができ、空間の完成に大きく近づいた。
もう1つは、足湯の設置である。今回の物件であるシゴトバ周辺には温泉が点在しており、その地域性を活かした要素として計画した。作業の合間の休憩時や、その時々の気分に応じて誰もが自由に利用でき、心身をリフレッシュできる場となることを意図している。
また、室内と室外で異なる使われ方が生まれるよう計画し、仕上げ材や色彩は連続性を持たせつつ、機能面に変化を与えた。室内側は落ち着いて作業ができるコワーキングスペースとして整え、室外側は気分転換や短時間の休憩に適した開放的な場として位置付けた。
これにより、同一のデザイン言語を保ちながらも、利用者の行動や心理に応じて使い分けができる多様な居場所の創出を目指した。
2026年2月21日、シゴトバ101は竣工の日を迎えた。本プロジェクトは「やどかリレー」から始まり、約1年という長い期間をかけて進められてきたものである。その過程では学生だけでなく、地域住民や関係者など多くの人々から支援や温かい応援を受け、それらに支えられながら計画と施工を重ね、無事に完成へと至った。関わったすべての人々の思いや協力が形となって現れた空間であり、単なる建物の完成以上の意味を持っている。
今後、このシゴトバ101が地域の人々にとって気軽に立ち寄れる場所となり、交流や活動が生まれる拠点として長く親しまれていくことを強く期待している。また、ここで生まれる新たなつながりや出来事が、さらに地域に広がっていく契機となることを願っている。