AWAHEI NO KURA
アワヘイの蔵
蔵とは代々大切なものを保管し、熟成させ価値を高める場所。
時が経ち使われなくなった明治蔵を、「思い出を蓄える場所」に再解釈し、蘇らせる。
担当
鳥羽設計室
熟成し伝承する空間から、人々と思い出の集積地に
鳥羽設計室での初となるプロジェクトは、「アワヘイの蔵」の改修提案であった。蔵とは代々大切なものを保管したり、置いておくことで熟成し、モノの価値が高まっていく場所のことである。
空き家となり使われなくなった蔵は、「蓄える」という本来の使命を失い彷徨っていた。
我々学生は、本来蔵が持っている「熟成」、「伝承」という機能を再解釈し、「思い出の集積地」という新たな価値を生み出すことで、この蔵を新たに人々の集まる場所にすることを目指した。
訪れた人は、言葉、写真、絵、様々な方法で想いを残す。蔵は、「人の想い」を蓄え繋ぐ、新たな目的地となった。
この蔵には自由に書き込める掲示板やマップ、持ち出し可能な本を設置した。これらは人々に使われ、その軌跡が刻まれていくことで「熟成」されていく。
蔵は、まちで起きたことを記録し保管して、訪れた人や次の世代の人々にそれらを「伝承」していく役割も担うのである。
無表情な蔵に、彩を与える
___あかりを灯す
本来モノを貯蔵するための蔵は、暗くてひんやりとしている。そこにあえてあかりを灯すことで、人々が集う場所であることを表した。
また、訪れた人が持ち運ぶ手持ち照明を製作。人が集まると空間が明るくなり、人が少ないと暗くなる。あかりによる蔵の表情の変化を楽しむことができる。
___異なる段差レベルが作り出す、自由でフレキシブルな蔵の形
我々学生はなかまちの人々にこの蔵を自由に使ってほしいという思いがある。既存の木の格子を活用し、蔵の風情を残しながら、利用者に使い方を「ゆだねる」自由な空間。利用者の使い方によって、空間の構成や用途もさまざまである。既存の格子に部分的に和紙を貼り、床レベルも格子によって分けることで、蔵の中でもゆるやかに空間を区切った。
休憩所や交流所としての使い方はもちろん、ときには地域のイベントスペースとしての役割も担う。蔵の奥では静かに本を読むことができ、手前では集まって話すことができる。
利用者は自由に使いながらも、自分の1番居心地の良い場所を見つけることができる場所となっている。