MUZINEKI SAISEI PROJECT
無人駅再生プロジェクト
廃駅寸前の無人駅を救いたい。設計室初の公共施設の改修案件。
担当
鳥羽設計室
待ち合わせの場所を、観光客と地元住民の交差点へ
三重県鳥羽市は、年間約300万人の人が訪れている観光地でもある。鳥羽市にある中之郷駅は、無人駅ながらも鉄道や珍しい電車が走る駅として1部の鉄道マニアや地元の子どもたちから人気の駅である。
しかし、乗客数の減少から廃駅寸前となってしまっている。電車利用の観光客のほとんどが1つ前の鳥羽駅で下りてしまうため、中之郷駅まで観光客が来ない。また、車で来た観光客も駅舎に気づかず通り過ぎてしまうことがほとんどである。
そこで、我々鳥羽設計室と鳥羽市役所がタッグを組み、今回の無人駅再生プロジェクトを発足。
中之郷駅が鳥羽駅から続く観光エリアとなかまちの境目にあることに目を付け、本来電車を利用する人々の待ち合わせの場所である駅舎を、「観光客と地元の人をつなげる場所」と再定義し、中之郷駅を賑わいの場にする。
無人駅で初のイベント開催
2022年12月、初めて中之郷駅を訪れた。電車利用者が少ないうえ、ホームと自動改札が直結しているため、駅舎2階はほとんど利用されていなかった。
駅利用の第一歩として、3月にワークショップを開催。駅舎2階で子ども向けの工作体験を実施し、無事大成功を収めた。
子供たちだけでなく、保護者の方や市役所、近畿鉄道の方々とも話す貴重な機会となった。無人駅でのイベントの開催は、近畿鉄道としても前例のない挑戦的な試みであった。そのためこのイベントの成功は、近畿鉄道、市役所の両者にこれからの中之郷駅の可能性を示すことにつながった。
今後も定期的にまちの人とを取り込んだワークショップ開催を予定しており、まちの人の駅利用の機会を増やすきっかけづくりにも力を入れたいと考えている。
鉄道をテーマにした、えほん駅を目指して
鳥羽市は、真珠や海女さんといった「海の文化」が盛んである。そこで、中之郷駅を含めた5つの施設で「鳥羽うみ文化」をテーマとするミニライブラリーの設置が決定。
中之郷駅では、鉄道と海をテーマにした絵本の書架、また電車をコンセプトとした新しい空間づくりを行う。ターゲットをファミリー層とし、子どもが興味を持ちやすい本の面陳列など「魅せる」ことを意識した書棚/POPを設置し、SNS映えする空間を目指す。
本の選定や展示方法の検討は國學院大学の教授と連携して行う。また、昔の駅周辺の風景写真や「鳥羽うみ文化」を表現するアート作品の展示もする予定である。
我々学生はこのコンセプトをもとに、つり革をイメージしたインテリアや、パンタグラフや木々など外の景色をゆっくり眺めるための机・椅子の設置といったアイデアを検討している。